大丈夫、怖くないから。ほら、手を伸ばして、呼んでみて。

貴方の友となる精霊を。

 

 

貴方は強くて優しい子だから、大丈夫よ。

その子ときっと、仲良くなれるわ。

 

私の自慢の子だもの―――――。

 

 

 

【出会い】

 

 

 

 

『よし、それまで!』

 

観客の居ないコロシアム。そこで戦っていた一人が馬から落ちた。それを見た審判らしき男が、高らかな声と大きく手を叩き合図を示す。

馬に乗った者の馬上槍の手が止まり、馬を制御し落ち着かせた。

どうやら馬上槍試合の模擬戦のようだ。馬から落ちた者と、もう一人は馬を降り、互いに握手を交わす。

 

『ありがとう。やっぱり強いなお前って』

 

銀色の西洋兜を脱ぎ、顔を出す若者の男。この男は今、握手を交わした相手の家とは同じ騎士の家系であり、交流ある人物だ。

今回はその両家の息子同士の模擬戦。その相手とは……。

 

「こちらこそありがとうございます。いえ、俺はまだまだですから…」

 

獅子のようなモチーフの西洋兜を脱いで現れた顔は、少女と見間違えそうな程の美しい顔立ちの少年だった。

 

この黒髪の少年が、“ディアス・キングレイ”だ。

キングレイ家は、騎士の家系だ。彼の父親もまた、騎士である。

 

見た目とは裏腹に、試合でのその実力とセンスは抜群だ。

先日のジョスト(※馬上槍試合の一騎打ち競技の事)では、年上・大人相手を見事打ち負かした事もあった。

 

「それよりも、その…落ちた時に怪我とかしませんでしたか?」

 

『はは、大丈夫だよ。君は本当に試合の時とそうじゃない時の差が凄いな。

戦っている時は怖いくらいこっちに突っ込んで来るのに、終わるとこうだから』

 

「はは…よく言われます」

 

ディアスは苦笑しながら言った。

 

(昔みたいに実戦じゃないから、こういう事が出来るのかもしれない。けれど…)

 

馬上槍試合は本来、実戦や殺し合い等をするものではない。

しかし初期の名残か、試合で使う槍自体もハリボテではなく、本物の鋭い槍だ。それによって死亡した者も居る。

 

ディアスは相手が槍の切っ先が相手を傷付けないような位置を取り、切っ先以外の部分を胴体に当てて、相手を馬から落としている。

 

「…では今日はこれで失礼します。ありがとうございました」

 

ディアスは礼儀正しく、相手に一礼し、その場を後にする。

その際に自分が乗っていた馬の顔を優しく撫でてから、コロシアムを出て行った。馬も、どこか嬉しそうに嘶いていた。

 

 

 

『…あの子は、馬の扱いも上手だな。心通わせてるというか何と言うか…』

 

『そうですね…。しかし、坊ちゃま。もう少し真面目に鍛練して下さいまし。お父上に怒られてしまいますよ』

 

先程まで、二人の試合の審判をしていたのは、相手の男の執事のようだ。そしてこのコロシアムは彼等の家の所有物だ。

労うようにタオルを差し出す執事。そしてそれを受け取り、汗を拭く男。

 

『親父の事なんて知るかよ。俺は俺なりに強くなってくつもりだ』

 

『またそういう事を…』

 

『親は関係無しに、俺なりの強さを見つけていくんだよ。そういう意志くらい、あってもいいだろ』

 

しばらくして、二人もその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

ディアスは馬を家の敷地内にある馬舎に戻し、家の扉を開けた。

流石に少し汚れてしまったので、昼ではあるが風呂に入る事にした。

 

(アイツに会うのに、汚れてちゃ恥ずかしいしな…)

 

アイツ、とはディアスの幼馴染の事である。幼馴染の姿を思い浮かべながら、ディアスは困ったように笑う。

そんな事を思っていた時、奥から足音が聞こえて来た。

 

『ディアス、お帰りなさい』

 

長い黒髪を静かに揺らしながら、修道服を着た女性が優しい声でディアスに声をかける。彼女はディアスの母親・アスロットだ。

 

「ただいま母さん、歩いて大丈夫か?」

 

現在、アスロットのお腹の中には二人目の命が宿っている。性別も分かっていて、女の子との事だ。ディアスの妹になる。

もうすぐ産まれるとの事だ。あまり歩かないようにと言われているのだが…。

 

『大丈夫よ。あの人が今お医者さん呼びに行ってていないから、私が出ないと。

それに…家に居るのに、子どもが帰って来たのを出迎えられないなんて、嫌だもの』

 

そう言って、アスロットは大きくなったお腹を大事にさする。

 

「…全く母さんは…今くらいは自分の身体の事を大事にしてくれよ。…でも、ありがとう」

 

アスロットは静かに微笑む。胸元に飾られた首飾りが揺れ、キラリと陽の光で輝く。

そして、目を閉じて小さく呟き始める。

 

『“清き水の精霊・ウンディーネ、その清き力で、この者を癒しなさい―――――”』

 

アスロットが精霊語で首飾りに向かって唱えると、水色の透き通った石から光りが放たれ、水の音と共にウンディーネが現れた。

彼女が付けている首飾りは“精霊の光”と言い、精霊石で作られた精霊の加護が受けられるものだ。彼女の家系に代々受け継がれてきた。

 

“精霊の光”によって呼び出されたウンディーネは、ディアスに触れ、その力で身体の汚れと共に疲れを癒していく。

 

「い、良いって母さん!今の身体で力を使うのは…」

 

『平気よ。それにこれからアーシェちゃんに会う予定なんでしょ?汚れたまま会うのもそうだけど、女の子を待たせちゃ駄目よ?』

 

からかうように笑うアスロットに、ディアスは少し頬を赤らめて反論する。

アーシェとは、彼の幼馴染だ。自分の父親と彼女の父親が冒険者仲間だった事もあって、交流がある相手である。

アーシェの家系は魔術や魔法の根源を生み出した一族のリオレイン一族で、彼女もその才能をしっかりと父親から受け継いでいる。

 

「だ、だから!俺とアーシェはそういう関係じゃ…」

 

『フフ、“今は”そうかもね。その内、分かるわよ。ほら終わったわ。“ありがとう、ウンディーネ”』

 

役目を終えたウンディーネは、霧状になって消えた。元居た場所に戻ったようだ。

ディアスの服や身体は、一点の汚れも無くなり、疲れも消えていた。

 

「…あ、ありがとう…」

 

ディアスは照れ気味に礼を言った。そして近くを通りかかった家に仕える従者の一人に声をかけ、母親を部屋へ案内するように言った。

 

「じゃあ俺はもう行くけど…母さん最近、咳もしてるだろ?風邪まで引いたらいけないし、ちゃんと部屋で休んでてくれよな?」

 

『……そうね。ありがとう、ディアス。いってらっしゃい』

 

ディアスは母親に小さく頷き、家を出て行った。

 

『…奥様、よろしいんですか…?』

 

アスロットを気遣う従者が、彼女に神妙な面持ちで尋ねる。

アスロットは微かに俯き、ゆっくりと首を横に振る。

 

『…さあ、部屋に戻りましょう』

 

心配そうに見つめる従者に連れられ、アスロットは自室に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェニア、出てこれるか?」

 

ディアスの家から東にある、今は使われていない広場、そこに数十メートルはある大樹の下に、ディアスは来ていた。

幼馴染のアーシェとの待ち合わせ場所だ。彼女と初めて会って、交流したのもこの場所だ。

 

ディアスの言葉で空中から姿を現したのは、火の鳥の姿をした小さな精霊だった。

フェニックスだ。炎と創造を司る、上位精霊の一種だ。ただしまだ幼い為、成鳥としての力はまだ弱いのである。

 

この精霊は、ディアスが初めて呼び出した精霊だ。“フェニア”と言う名も彼がこの精霊を友の証として付けた名前だ。

彼が精霊に好かれやすい性質を持つ為なのか、フェニアは出会った当初から懐いている。姿を消して、ずっと彼の傍に居るのだ。

 

姿を現したフェニアはディアスの肩に乗り、スリスリと小さい顔を彼の頬に擦り付ける。

火で出来た身体だが、攻撃の意思がフェニア自身に無い限り、相手に傷を負わせる事は無い。

 

「はは、こらくすぐったいって。ほら、そろそろアーシェも来る頃だし、遊んできな」

 

しばらくディアスにじゃれ付いた後、フェニアは翼を広げ、大樹の周囲や枝の間を元気に飛び回る。

そのフェニアの姿に、ディアスは微笑ましく見守った。

 

(…俺もあんな風に母さんや父さんに、前みたく甘えられたらな…)

 

ディアスは苦笑いしながら、一つ溜息を吐いた。

 

「…何てな、らしくないか…」

 

数分後、広場の入り口の方向から足音が聞こえて来た。

 

 

『ディアス!』

 

フェニアから視線を変えた先に見えたのは、幼馴染のアーシェだった。

元気に手を振りながら、ディアスの方へ駆けて来る。

 

「!アーシェ!…って、うわ!?」

 

アーシェは勢いよく、ディアスに抱き着いた。

 

『今日も大好きだよー!』

 

「おい!いきなり抱きつくなっつってんだろ、アーシェ!」

 

『やーだー♪』

 

薄紅色と緋色の異彩の大きな瞳でアーシェはディアスを見つめる。

アーシェはディアスの事が大好きで、こうした積極的な行為をよくするのである。

 

アーシェの笑顔での抱きつきの前では、ディアスの抵抗も虚しく終わる。好かれているのだから、無下にするわけにもいかない。

彼自身も、彼女の好意が嫌なわけではないし、勿論彼女の事が嫌いなわけでもない。

 

(アーシェのこういう素直な所、嫌いじゃないというか…羨ましいな……)

 

アーシェはディアスに対して、いわゆる一目惚れの状態だ。

出会った時からこうして抱き着かれたり、”好き”と言われ続けたりしている。

 

(…俺も、こんな風に素直に甘えられたらな……)

 

ディアス自身、アーシェの事を好きだと思っている。だがそれを明確に言葉に出来ていない。“恋”を知らない状態なのである。

 

『いやー、思ったより実践の方が時間かかっちゃったからさー。待たせちゃったかなと思って』

 

「…別に、お前がどれほど遅れようが、俺は此処で待ってるけどな…」

 

聞こえないように、ぼそりとディアスは呟いた。

今の彼には、これが精一杯のようだ。

 

『僕もだよディアス!君が来てくれるなら、僕だってずっと待てるよ!』

 

しかしアーシェがそれを聞き逃すはずも無かった。

満面の笑みのアーシェに、ディアスは一瞬、面食らったような表情になる。

そして引いてきていた頬の赤みが、再び彼の頬に熱が帯びる。

 

「…! あーもう!今のは聞き流す所だろーがバカ!」

 

『じゃあバカでいいもーん。ディアスを大好きでいられるならー♪』

 

「〜〜!!?」

 

何でここまではっきりと直球に言えるのか。

アーシェの眩しいくらいの素直さに、ディアスは言葉が出なくなるくらいの衝撃を受けた。

 

(どうして、ここまで素直に言えるんだ?)

 

ディアスは、自分が長男であるが故に、誰かに甘えてはいけないのではと思い込んでいる面がある。

だから彼が周りの人々に優しいのも、どこかでそうさせてくれる存在を望んでいるからかもしれない。

勿論、彼がそれを自覚しての優しい性格かと言えば、それは違うのだが。

 

あはは、ディアスかわいいー♪」

 

「う、うっせぇ!可愛いとか言うな!てかいい加減離れろ!」

 

『もうしばらくこのままでー』

 

アーシェのディアスへの抱きつきは、彼女が満足するまで続いた。

 

 

 

 

『えへへー、満足―♪』

 

「それでも俺の腕は離さないんだな…」

 

満足したとは言ったが、アーシェは未だにディアスの右腕にぎゅーっとしがみ付いている。

少しでも大好きな彼に触れていたいからだろうか。ディアスも無理に彼女を振りほどこうとはしない。

 

「…本当お前、俺の前だと色々と違うよな」

 

自分とは違ってこれだけ素直に自らの気持ちを言えるのか、彼には不思議でもあったし、羨ましくもあった。

彼女も一族の長女という立場。加え一族の長の次期筆頭とも言われているそうだ(彼女の頭に飾られた仮面はその証拠なのである)。

そのような立場で、これだけ素直に気持ちを表せられるのは尊敬すら覚える。

 

『ずーっと堅苦しい雰囲気でいるのって息が詰まっちゃうもん。僕はこれが素なんだよー』

 

「そういうもんなのか…?」

 

アーシェの事は、長い付き合いのディアスでも時折読めない事がある。何を考えているのか、何をして来るのかも。

先程のように自分に抱き着いてくるのも、唐突にしてくるものだから、避けようがない。

 

(相変わらず読めないな…。コイツの素直さも、真似出来そうにないし……。…それでも、コイツと一緒に居るのは、嫌じゃない…。寧ろ……)

 

そこまで思っていた時、アーシェはじーっとディアスの顔を覗き込む。

 

『どうしたのディアス?何かさっきからぼーっとしてない?』

 

「え…な、何だよ急に…?」

 

『いやー、来た時も思ったんだけど、何か君がここにいないような感じで遠くを見てるから気になって』

 

「……!」

 

アーシェのその言葉に、ディアスは少し目を見開く。

何故そこまで、心を見透かしているかのように自分の揺らぎに気付けるのか。本当に、彼女は読めない。

 

(妹が生まれる事とか……話しても、いいんだろうか…)

 

そう思ったが、その躊躇いよりも先に、言葉が口に出ていた。

アーシェは喜んで祝いの言葉をくれたが、ディアスは少し浮かない表情だ。

その彼の表情を見たアーシェが「嬉しくないのか」と尋ねて来た。

 

(妹が出来たら…余計に親に甘えられなくなる…なんて言える訳がねぇよな…。今でもあまり出来てないのに…)

 

心の中で溜息を一つ吐き、アーシェの顔を見る。すると何故か彼女は納得したような表情で、ディアスを見ていた。

 

「な、何だよ、何か分かったっつーのかよ」

 

『下の子が出来ると母親独り占めできないもんねー。わかるよーその気持ち』

 

「ッ…!? ち、ちが…!そういうのじゃ……!」

 

咄嗟に否定するディアスだが、実際はその通りで、言葉に詰まってしまう。

 

「僕も下にいるから分かるよ。一人だった時みたいに、素直に甘えづらくなっちゃうんだよね。下の子に付きっきりになっちゃうし」

 

『だ、だから…それは……!』

 

アーシェの言葉を否定しようとディアスはその言葉を探すが、見つからない。

これから生まれてくる妹に、嫉妬に近い感情があるのは、否定できないでいる。

 

ディアスが言葉を必死で探していると、アーシェは彼の頭を優しく撫で始める。

 

「なッ…!?」

 

突然の彼女のその行動に、ディアスの思考が一瞬、ストップしてしまう。

 

『母親に甘えられる回数が減ったのならさ、その時は僕に甘えてもいいんだよー』

 

(…どうしてお前は、そうやって……)

 

払い除けられないアーシェの手。温かく、優しいその手に、身を委ねたくなった。

ディアスは、アーシェが撫でやすいように少し彼女の肩に寄りかかるように首を傾ける。

 

「…そういう目で見んなよ。恥ずかしいし、こんな男、嫌だろ…?」

 

親に、母親に甘えたい。そういうのは男らしくないと思っていた。お互い、まだまだ親に甘えたい年頃だ。

アーシェは微笑みながら静かに首を横に振る。

 

『ぜーんぜん。僕等まだ子どもだもん。恥ずかしくないよ!

どんな立場だろうと、男だろうと女だろうと、子どもは子ども。甘えたいって思うのは普通だよ。だから君も気にしないで』

 

「アーシェ…。……ありがと…」

 

ディアスは先程までとは違う、柔らかな笑みを浮かべた。

 

『えへへー。どういたしまして♪』

 

帰る時間になるまで、二人はこうして過ごしていた。

不思議とどちらとも、途中で飽きる事もなく、心地良い時間が流れて行った。

 

 

 

 

 

『もう大丈夫?』

 

「だ、大丈夫だからもう離せよ、手」

 

帰る時間になり、広場を出たアーシェとディアス。

彼等の右手と左手は、握られている。

 

『このまま君を送ってってもいいんだけど、家の方角正反対だからねー』

 

「だ、だから!もう大丈夫だって言ってんだろ!」

 

『はいはーい。甘えたくなったらいつでも言ってね』

 

「う、うるさい!」

 

パッとディアスの手を離すアーシェ。

強気に言ったものの、ディアスは照れつつも、どこか嬉しそうである。アーシェはいつも以上に嬉しそう、と言うより幸せそうな表情だ。

 

『じゃあまたね、ディアス』

 

「…おう。またな、アーシェ」

 

ディアスは慣れていない笑みを浮かべて小さく手を振る。アーシェは笑顔で元気に大きく手を振り、それぞれ帰路に着いた。

 

 

「……ありがとう、アーシェ…」

 

小さく呟いた後、歩き出す。戻って来ていたフェニアが姿を現し、ディアスの肩に乗る。

フェニアもその小さな体で、懸命にディアスの頬や頭にすり寄ったり、羽を広げ、ディアスの頭を撫でたりするような動作をする。

 

「はは、どうしたんだよフェニア。お前もアーシェみたくしてくれようとしてんのか?」

 

ディアスは小さく微笑み、フェニアの顔を指で優しく撫でる。フェニアも嬉しそうに「ピィ」と一声鳴いた。

 

「…ありがとうな」

 

フェニアは首を傾げながら、小さく鳴いた。

 

 

「…? 父さん?」

 

自分の家の近くまで来た時、家の扉の門の前で立っている人物が居た。

ディアスの父親である、ラディクだ。ラディクはディアスの声に気付き、顔を上げる。

 

 

『…!ディアスか。お帰り。アーシェ君と会って来た帰りか?』

 

「うん、まあな。父さんどうしたんだよ?門の前で立って」

 

ディアスの問いに、ラディクは少し考えてから口を開く。

 

『…ああ、つい先ほど呼んだお医者様がお帰りになってな、だから私はそのお見送りしたんだ。

あとそろそろ、お前が帰ってくる時間だろうと思って待ってたんだ』

 

「…俺の方はついでかよ?」

 

と、ディアスは普段見せない、いたずらっぽい笑みでラディクをからかうような言い方で返した。

少しだけ、アーシェの真似をしてみたくなったのだ。

 

『い、いやそういうつもりじゃなくてだな…。…ディアス、あのな……いや、何でもない。家に入るか』

 

「…?分かった。一緒に入ろうか、父さん」

 

ラディクが何か言おうとしたのが気になったが、ディアスはそれ以上言及しなかった。

ディアスは、父親と共に家へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

この時の彼は、まだ何も知らなかった。

 

 

心を揺るがす、物語の始まりを――――――――――――――。

 

 

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